あじさい散歩
あじさい散歩
梅雨空の下、涼やかに園地を彩るアジサイの仲間。
牧野植物園内にはヤマアジサイやガクアジサイ、またそれらから作出された園芸品種を中心に約80種類を植栽しており、6月中旬ごろまでお楽しみいただけます。こちらではアジサイの仲間を主役に牧野植物園を満喫するルートをご紹介します。
※雨上がりや雨天時は滑りやすい場所もありますので、足元に十分お気をつけてご散策ください。
1時間半コース
スタート地点:正門
1. 高知の自然植生の中に佇むヤマアジサイを観賞
土佐の植物生態園
県内に自生する植物を収集し、学術的に植栽を行い高知の自然を再現している「土佐の植物生態園」。
山地の植生を再現したエリアでは、滝のそばでヤマアジサイが静かに彩っています。
ヤマアジサイは本州(福島県以南の太平洋側)・四国・九州に分布し、山地の谷沿いなどの湿った林内に生育しています。色やかたちが多種多様で数多くの品種が見出され、広く愛好されてきました。その佇まいからは、長きに渡って親しまれてきた自然の侘び寂びを感じることができます。
2. 屋根のあるアプローチでゆっくり観察
回廊
本館と展示館をつなぐ回廊は、雨の日でもゆっくり散策しながら観賞できるエリアです。
歩みを進めるごとに、マイコアジサイやヤマアジサイ'星の雫'、'瀬戸の月'など多彩なあじさいをご覧いただけます。
この回廊の石垣には、シダ植物をはじめ、ジョウロウホトトギスやギボウシの仲間などが植栽されており、これらの花がまだ咲いていない時期であっても、青々と美しく広がる葉からは趣が感じられます。
また5月下旬から6月になると開花する、キレンゲショウマやドクダミの清楚な姿も見どころの一つ。
季節の移り変わりの中で織りなす、植物の調和をお楽しみください。
3. 牧野博士が愛でたヒメアジサイ
中庭
牧野博士が昭和4(1929)年に『植物研究雑誌』にて、長野県と岩手県周辺で採集した標本をもとに発表したヒメアジサイ。博士はこのヒメアジサイを「優美な一品」として大変気に入り、東京都練馬区の自宅(現・牧野記念庭園)にも植えて観賞していました。
当園の個体は半世紀以上前に、牧野家から、練馬の自宅の庭にあった株の挿し枝をいただいて殖やし、今日まで大切に守り育ててきたものです。
博士がその手で愛培していたヒメアジサイは、今年も澄んだ青空のような色の花を咲かせています。
南園の博士の銅像周辺にも植栽していますが、博士ゆかりの植物に囲まれたこの場所で、ゆっくり楽しんでみてはいかがでしょうか。
4.「幻のアジサイ」
南園
南園の牧野博士の銅像の後ろを奥へと進むと、ヤマアジサイの八重咲き品種であるシチダンカが群生しているスポットがあります。
シチダンカは、シーボルトが江戸時代に『フロラ・ヤポニカ』(日本植物誌)に採録して以来見た者がいなかったため「幻のアジサイ」とされていましたが、昭和34(1959)年に兵庫県の六甲山でおよそ130年ぶりに発見されたことで話題となりました。
装飾花のそれぞれのがく片の先が剣状にとがって重なり、まるで星のような花姿が特徴的。
南園の奥地で静かに観賞できる、ひそかなおすすめスポットです。
※シチダンカの植栽地への道は石階段があり、濡れていると大変滑りやすくなります。お足元には十分ご注意ください。
5. 南園の奥地に広がる群落
南園
シチダンカのそばではヤクシマアジサイが見事に咲き誇っています。
ヤクシマアジサイはその名の通り屋久島の固有種で、おもに渓流沿いの疎林内に生育しています。白色で最大約5㎝にもなる装飾花がひと際存在感を放ち、株一面に開花しているようすはまるで白い蝶が集まっているかのよう。
自生地の環境に近いこの場所で、すぐそばを流れる小川の音を聞きながら、その雄大な姿をお楽しみください。
6. 東洋の園芸植物を眺めながら散策
南園
南園の50周年記念庭園は、年間を通して四季折々の植物を身近に楽しめる「憩いの場」として平成20(2008)年に整備されました。
東洋の園芸品種を中心に植栽した庭園は、初夏にはカキツバタやハナショウブが咲き渡り、青を基調とした姿に変化します。なかでも庭園の随所に配したヤマアジサイの園芸品種は見逃せません。
牧野博士の銅像周辺、小川が流れる曲水の庭では、歩みを進めるごとに多種多様なあじさいの姿が目に飛び込んできます。装飾花が白色から紅色に変化するヤマアジサイ '紅' や、上品な藍色の花が美しい '黒姫' は特に人気です。
またガクアジサイやノリウツギといったアジサイの仲間も同時に見ごろを迎え、華やかながらも心和ませてくれる憩いの空間として、多くの来園者に親しまれています。
7. 歴史あるお寺の面影を残す園地とあじさい
南園
温室のそばには竹林寺へ続く「お馬路」の名で親しまれている遍路道(参詣道)があり、かつてのお寺の遺構を今なお残す風景から、当時の面影を感じることができます。
この風情あふれる景色に調和するように、ヤマアジサイ '雅' や '伊予桜' 、斑入りの葉の '九重山' といった多彩な園芸品種が、石畳や両脇の石積みに沿って咲き渡っています。
五台山の長い歴史を感じつつ、ゆっくりと歩いてみてください。
石階段を上りきって温室横のデッキに立つと、独特の谷地形が織りなす南園が一望できます。ここまでの散策の疲れも癒す絶景スポットです。
8. 散策の余韻にひたる~レストランやショップ~
中門
2023(令和5)年5月にオープンした植物研究交流センター。3階には、南園や温室を望む眺望抜群のレストランや、牧野博士関連グッズや当園オリジナル商品などをお買い求めいただけるミュージアムショップがあります。
【レストラン「C.L.GARDEN」】
【牧野ミュージアムショップ「サクラ」】
1階にあるキッズラボでは月に数回、土日に、お子さまを対象にした学習プログラムも開催。
顕微鏡を使った観察や専門的な内容を含んだ植物園ならではの体験などが楽しめます(事前予約制)。
【キッズラボ・植物教室について】
3階には中門があり、こちらから入退園できます。