概要・ご挨拶
概要
人と自然の関係を大切にした安らぎと憩いの空間
高知が生んだ「日本の植物分類学の父」牧野富太郎博士の業績を顕彰するため、博士逝去の翌年、1958(昭和33)年4月に高知市の五台山に開園。起伏を活かした約8haの園地には、博士ゆかりの野生植物や園芸植物など3,000種類以上が四季を彩り、自然の中で植物に出会う喜びを感じることができます。また、五台山という恵まれた自然環境と調和した、四国唯一の総合植物園として親しまれています。
1999(平成11)年には園地面積を拡張し、植物に関する研究と教育普及の拠点となる「牧野富太郎記念館」を新設。研究活動では、高知県の野生植物の調査・収集・保全に取り組み、海外ではミャンマーを中心に植物多様性の解明や資源植物の探査を行っています。
2008(平成20)年には、南園に東洋の園芸植物を観賞いただける「50周年記念庭園」が誕生し、2010(平成22)年には温室がリニューアルしました。さらに、2019(平成31)年には「こんこん山広場」と「ふむふむ広場」を拡張整備し、展示館内には、4K映像を鑑賞できるシアターを開設。また、2023(令和5)年5月には「植物研究交流センター」がオープンし、薬用植物資源の開発を主題とした応用研究を進めています。開園から半世紀を超えて、植物園の役割である保全・研究・教育普及・憩いの場のすべてを備えた総合植物園として歩み続けています。
ご挨拶
このたび、高知県立牧野植物園長を拝命いたしました高野昭人と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
令和5年度前期の連続テレビ小説「らんまん」(NHK)の放映により、牧野富太郎博士の功績が改めてみなおされ、高知県立牧野植物園の存在も日本中に広く知れ渡るところとなりました。牧野植物園の来園者数が格段に増えたことはもちろんですが、日本各地の植物園でも牧野博士に関するイベントが開催されました。このようなタイミングで本植物園の園長に迎えていただくことは、植物園に関係してきたものにとって大変光栄なことであります。
私はこれまで大学の薬用植物園に30年ほど勤務し、薬学の中でも植物に一番近い分野である薬用植物・生薬の研究を行ってきましたが、植物を扱うすべての研究の基盤は植物分類学にあると考えています。学生時代の研究テーマは「蒲公英」で、春先には日本中をまわってタンポポを採集していました。四国では、カンサイタンポポ、シロバナタンポポ、クシバタンポポ、ヤマザトタンポポなどを採集した記憶があります。タンポポに関する研究はライフワークとなり、現在でも北海道の材料を中心に研究しています。一方で、大学院生時代に海外学術調査隊に参加する機会に恵まれ、ヒマラヤ地域で薬物資源の調査を行いました。その後も各地で調査を行い、近年はウズベキスタンで調査を行っています。途中、資源植物学、植物インベントリーという考え方に出会い、大いに刺激を受けました。また生薬学には本草考証というものがあり、古い文献を読んで、生薬の歴史的変遷を解明します。私が牧野植物園長を引き受けさせていただいた理由の一つは、私がこれまでの研究の中で必要としたものがこの植物園にはすべて揃っているからです。
本植物園には、牧野博士にゆかりのある植物や高知県内に自生する植物などが自然環境を活かして植栽されていて、牧野博士を本当に好きな職員が多く集まっていると聞いています。また牧野博士が収集したさく葉標本や貴重な書籍も大切に保存されています。私はこの植物園にいるだけで、いろいろなことを発見し、学ぶことができるのではないかとわくわくしています。
インターネットの普及により、情報が社会にあふれている現代では、牧野博士の偉大さを示す情報に触れる機会も多く、私はその任の重さを実感しています。甚だ力不足な私ではありますが、植物園内外の皆さんの力をお借りし、一緒に牧野植物園のさらなる発展のために努力していきたいと思っていますので、皆様のご支援、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
高知県立牧野植物園 園長
髙野昭人
令和7年4月1日