高知県立牧野植物園研究報告 やまとぐさ(創刊号/平成28年3月24日発行)
刊行にあたって
<表紙>「ヤマトグサ」牧野富太郎 画
ケント紙/鉛筆 年未詳 当園所蔵
高知県立牧野植物園は、高知が生んだ「日本の植物分類学の父」牧野富太郎博士の業績を顕彰するため、博士逝去の翌年、 1958(昭和 33)年 4月に高知市の五台山に開園しました。1999(平成 11)年には、園地面積を拡張し、植物に関する教育普及と研究の拠点となる「牧野富太郎記念館」を新設するとともに、ニューヨーク植物園から小山鐵夫博士を園長として迎え、植物の多様性に関する研究を中心とする研究型植物園として再出発しました。現在では、牧野富太郎記念館での種々の展示や学校教育プログラムの開発など植物と人間生活の関わりを主題とする教育普及活動の展開や、温室の充実や 50周年記念庭園の設置、「花皿鉢」で有名になったフラワーイベントの実施など植物の展示活動の充実もはかり、研究・教育普及・植物を通じた憩いの場の提供という機能を併せ持つ総合型植物園としての発展をめざしております。
当園には専任の研究員がおり学会発表や学会誌などを通じてその研究成果を発信していますが、それだけでは植物園の研究活動としては不十分であるように思います。園芸部や教育普及課の職員が、それぞれの業務の中で発見した研究課題にアプローチし、その成果を論文として発信してこそ研究型植物園だと考えています。
学会に所属する研究員以外の職員が、日常の業務の中で遂行した研究の成果を発表する雑誌としては日本植物園協会が刊行している「日本植物園協会誌」がありますが、残念ながらその紙幅は限られています。本誌「やまとぐさ」は、そのような研究報告の場として刊行いたしました。創刊号は、園地リニューアル後 15年が経過するとともに、小山園長が退任されるという節目にあたることから、小山名誉園長の回顧録をインタビュー記事として掲載するとともに、この期間に園の活動を主導してきた研究、教育普及、園地整備の分野の幹部職員の総括的な論文を中心に掲載しております。
今後は牧野植物園の職員の様々な研究活動を発信するとともに、執筆規程を整備して外部の方々からの投稿論文も掲載できるような和文研究誌として育てていきたいと考えております。皆様のご支援をお願いいたします。
高知県立牧野植物園 園長
水上 元
第5号(令和6年6月27日発行)
第4号(令和4年3月30日発行)
- 向坂道治と牧野富太郎の交流 −二人の遣り取りした書簡から見える植物図鑑編纂の道のり− 田中純子 1
- 大泉の牧野富太郎邸の住居空間とその暮らしについて 伊藤千恵 9
- 牧野文庫の本草書とドクダミの民間薬調査 関田泰子 15
- 梼原町長山家寄贈書籍から読み解く幕末から明治初期の地域医療 吉冨誠 25
- エキスライブラリーの構築について 幾井康仁 31
- オケラの栽培に関する基礎研究1 岩本直久 35
- 薬用植物の試験栽培による中山間地振興に向けた取り組み
〜東豊永集落活動センターとの連携による活動〜 西村佳明 39 - 高知県におけるホソバオケラの栽培研究 松野倫代 43
- ガイド事業5年間を振り返って 松本孝 55
- 高知県における外来種ウチワサボテン属の分布と防除方法の検討 倉岡木花・藤川和美 59
- 2019年9月シャン州植物インベントリー調査 堀清鷹・藤原泰央・Phyo Kay Kine 67
- ミャンマーにおける暮らしと植物〜生活文化を支える植物たち〜(2)
チン州南部カンペレ地区のホームガーデンにおける有用植物とその利用 藤川和美・Thant Shin 77